わたしが観てきたメグロ 

(第九十四回) 「福山・旧車ミュージアム F6」・展示メグロ車より、 


ようこそ!「わたしが観てきたメグロ」では、S−8レストア用に各地で資料用に撮影した写真、
参加イベントで巡り会ったメグロの写真を紹介します。


◎ 今回は、広島県福山市加茂町にある旧車ミュージアム、
   [FUKUYAMA] オートバイ 旧車ミュージアム F6(エフロク)にて展示されて
  在るメグロ車各種のご紹介♪

◎ こちら2022年7月にオープンした旧車ミュージアム、サイトを拝見しますと
  1970年代の国内4メーカー(+α)の代表的モデルを中心に、レストアが
  された旧車約100台を展示との由。







◎ 昨年、拙サイトのご意見番(笑)で在られる"姫路の松居"さんより、
  此方ミュージアムに希少メグロ車が多数展示との情報を頂き、
  「これは早々に伺わなければ〜〜」っと機会を模索致して居りましたが、
  2025年5月11日に行われました、「岡山旧車会・2025年 春のミーティング」に
  拙S−8にて参加の序に足を延ばして、ようやく伺うことが出来ました♪





◎ それでは早速、展示のメグロ各車をご紹介〜
  先ずは拙サイト取材にて初紹介の希少車からどうぞ!

 (第九十四回)
 「福山・旧車ミュージアム F6」・展示メグロ車より、


 メグロ250・AT"オートラック"
  (1963年)

いや〜、現車を拝見できるとは思っても居りませんでした!
メグロ車の中でも異色なモデル、積載運搬に特化した仕様が特徴の"オートラック"です♪
元々実用主体にラインナップがされたメグロ車ですが、
オートバイの利用目的が次第にスポーツライディングへと時流が移り、
徐々にメグロ車のスタイルとは乖離するように在った中、
反面、物流の主体が自動車へと移り、特に都市部での需要増加に伴う道路渋滞が社会問題に。
そこで、トラック程ではないけれど、
都市部の短距離運搬には小回りの利くオートバイでの運搬が適して居るのでは、
とのコンセプトから、敢えて積載運搬に特化した仕様とした構造として、
低重心に小径極太のリアホイールとして重量物積載に適した安定性を持たせて、
荷台は従来モデルの数倍ほどの面積を確保して、米俵が数個でも載るように配慮がされて在り、
まさに二輪トラックの名称に相応しい。


概要としては同期で在った S7をベースに、
フロント廻りにエンジン、電装系は共用として、スタイルは実用モデルでベストセラーと為った S3に倣い、
フェルタンクおよびメインシートをS3同様にティアドロップタンクと鞍型シートを適用。
但し上記の通り積載運搬に特化した仕様であるので、メインフレームは前後荷重の分散を考慮した専用構造。
またリアは小径極太のリアホイールに合わせた緩衝と駆動系、制動系を為している。


 K5型:単気筒OHV・4サイクルエンジン

拙S−8でお馴染みなK5型エンジンを搭載。
同期のS7後期型で採用の12v電装仕様を流用して在るので、
始動はキックスターターに加えセルモーターに拠るセルフスターターを装備。
積載状態で不安定な姿勢に為らなくとも始動できるよう考慮。
エンジン自体の特性はS7搭載仕様と変えてはなく、
・総排気量:248cc(ボアxストローク:65x75mm)
・最大出力:12.5HP/5400rpm
・最大トルク:1.85kg-m/4000rpm
積貨専用と云うことで興味深い減速比は、
別体式のQM3型をS7に同じく適用するので一次比に変化はなし。
エキゾーストラインもS7に同じながら、展示個体ではキャブトンタイプのマフラーを流用で装備。


セル付きなのでS7に同じくエンジンヘッドには始動補助としてメグロ固有の装備である 電磁デコンプを搭載。
キャブレターも同じくミクニのVM22-14を適用。
プライマリチェーンケースもS7の仕様で適用装備。

 フロント廻り

フロントもS7の仕様まんまで在るが、雰囲気的に登場時期で僅かに遅い S−8のイメージに近い。、
一つにはライトレンズリムが当初のS7では鍔無しの丸リムで在るのが、
S7後期〜S−8で採用された鍔付きリムを使って在ることに拠る。
今一つには、ウインカーレンズにS7用の仕様(S5タイプ)としたものと、
S−8で採用されたタマゴ型レンズ(CAタイプ)としたものが併存することに拠る。
展示個体ではS7用の仕様である様子。
ホイールサイズは3.00×18inでS7と変らず。
40本スポークリムに拠るテレスコピック型緩衝。
フェンダーはS7よりS−8に似た印象。


 ライトケース

砲弾型のライトケースもS7準拠ながら、
後述のティアドロップ型フェルタンクの印象でS−8の方が似ている
レンズが縦に中折筋の在る所謂"鉄仮面"タイプである様子ながら、元からで在るかは不詳。


ケース上面にメインキースイッチと速度計を配置する構成もS7に同じ。
速度計パネルも当時のメグロ車で共通の仕様、目盛りは120km/hまでの刻み


 右サイド(オイルタンク)

オイルタンクは"オートラック"の専用品。
容量はS7に同じく2L
展示個体では取り外されてあるが、オイルタンク下の空間にバッテリーが装着される。


 左サイド(エアクリーナー)

左サイドにはエアクリーナーがケースに内包装備。
その後部で左右を貫通するケースはツールボックス。


 フェルタンク

メグロ車のイメージシンボルのひとつ。
異形スタイルで在ってもこのティアドロップ型フェルタンクに、
メッキ地にタンク上面の前後と両サイドのタンクバッヂ廻りの塗意匠、
メグロウイングの七宝焼バッヂが付けば"視れば判る"です!
"オートラック"はS3をイメージベースとしたのでこの仕様に。
またS−8はこのフェルタンクを基に用意が為された様子。


 鞍型シート

これもS3がイメージベースなのでこの仕様に。
シート緩衝もS3で用いたゴムブロックの圧縮緩衝体を使った構成。
またS−8も基本構成ではこれに同じ。(形態には違いあり)


 駆動系

"オートラック"の特徴のひとつと為る駆動系。
構成としては一般的なドライブチェーンを用いた二次駆動系。
但し当時としてはスクーター並みの小径ホイールで、重量駆動すると云うのは特殊。
この二次駆動系での減速二次比と、後述の小径極太のリアホイールとの効果によって、
全体のギアレシオは各シフトで半減する感じと為る。
なおリアホイールの関係上、チェーンラインが通常より低い位置に在る為、
同時期にメグロ車が装備したフルカバーのチェーンケースではなく、
代わりチェーン上面から覆うチェーンカバーを装備する。

 リア廻り

"オートラック"の特徴と為る小径極太のリアホイール。
タイヤサイズは5.20x10in
此れにより嵩の在る荷物や重量物の積み下ろし作業が楽に行える。
また全体としての重心が下がるので、積載走行時の安定性にも寄与する。
ホイールはスクーターに倣いディスクリムを採用。
制動はハブドラムのシングルカム内拡式にて、
内径165mm、巾30mmはS7他に同じ。
フェンダーは"オートラック"専用。
小径ホイールに対応なので小振りながら、
構造自体はS7他に同じく深絞りの鋼板プレス。
ウインカーは当初よりタマゴ型レンズ(CAタイプ)を適用。
テール&ライセンスベースはS7同様の仕様。
テールレンズにはお決まりのルーカスタイプ、
ライセンスベースは現用ナンバープレートサイズ。
緩衝は小径ホイール対応と積貨対応に拠り、
プランジャー式を適用して積載荷重を確りと支える!


 荷台

やはり"オートラック"の特徴と云えばこの荷台でしょう〜
サイズ的にはビールケースやトロ箱、米俵辺りの積載を想定した形態。
トラックで在る程度の物量を一度に運搬するのではなく、
市街地での配送配達用途で小回りが利くことが利点と為る用途での仕様。
鋼材で格子状に組んだ構造は重量物を安定して載せられる様。


荷台はメインフレームに対し下支えがされて在り、
且つ荷台前方部でもフレームに荷重が掛かるよう固定されて在ることで、
制動時に前方へ掛かる荷重をフロントへ分散させて、
ブレーキング際での不安定感を軽減するよう構造とされて在る。


結果的には市場での評価があまり得られず、
僅かな販売実績にしか為らなかった様子。
ただ、そのコンセプト自体に間違いが無かったことは、
現在のミニバイクや三輪スクーターでの配送配達の
実態を視れば判るとおり、
もはや無くてはならない状況です。
当時の世間に先見性が無かったのか、
あるいは時代に対して早すぎたのか!?




メグロ250・S2ジュニア

続いては、250cc"ジュニア"シリーズを順に拝見いたしましょう〜
先ずはシリーズの二番目のモデルで1954年から'56年まで生産販売がされたS2。
外観は後継モデルと為る S3に似ては見えるが、詳細に視れば違いは多く、
S3より造りに手が掛かって在り、ライトケースに付く計器も、
丁寧な造りに上位モデルばりの高品位なパーツの使用。
高級感の在る外装に意匠もマニアには評価が高い。
展示の個体はライトリムに鍔付きタイプを使用、
メインシートもサドルタイプよりは鞍型に近い仕様で在ることから、
S3への過渡期にあった生産末期頃の個体かと思われる。
なおS3の展示は、訪問当日時はレストア作業の為か拝見できず、残念〜〜





メグロ250・S5ジュニア

S3の終売後に急遽用意されたS5。
250ccモデルは本来、新機軸のOHCエンジン搭載モデル・ F型に引き継ぐ計画で在ったものの、
極端な不人気モデルと為ったことから、S3ベースのOHVエンジン搭載ながらS5としてモデルチェンジ。
なのでエンジンやフレームはS3譲りながらフェルタンク等外装やフロント廻りはF型から継承した異色モデル。
しか〜し、直ぐに緩衝方式をスイングアームに改良したS7にモデルチェンジした為、
半年余りの生産期間に僅か5000台未満が造られたことから希少モデルでも在る。
上記紹介の"オートラック"に並び当館必見の一台





メグロ250・S7ジュニア

そのS5からのモデルチェンジ。
外観から共通点も多く視られるのが判る。
メインフレームは、リア懸架をS5のプランジャー式に変えて、
時流のショックアブソーバに拠るスイングアーム式として新規設計
メインシートも鞍型シートからシングルのボックスシートに。
不人気のF型に近い意匠ながら、メッキ意匠に戻してメグロらしさを強調。
生産台数もベストセラーのS3に次ぐので、観る機会も比較的に多いかも。
展示の個体はセル始動を装備にて12v電装バッテリー点火方式に改良された後期型。





メグロ250・S−8ジュニア

拙サイトのメインモデル:S−8
仕様装備はほぼS7を踏襲しつつも、人気のS3イメージにリメイク。
僅か先に市販されたAT"オートラック"と外装面で共通化することで、
メグロ愛好家の要望であったS3の再販に答えられるモデルとして誕生。
当にジュニアシリーズの集大成的オートバイ。
展示の個体はS−8のボアアップモデル・300cc:J−8"アーガス"の販売に際し、
川崎航空機製造にて部分改良が為された後期型。





 カワサキ250・メグロSGT

純粋にメグロとして最後のモデルと為ったSGT
製品化までのプロセスはカワサキメグロ製作所として進められた。
試作までは"MEGURO"のロゴで製作されたが、市販時では既にカワサキ自動車販売の下で在ったので、
現存する個体はフェルタンクのエンブレムに 川航ウイング("MEGURO"ロゴ)が残る以外
すべて"KAWASAKI"で在る。
視ての通り旧来のメグロ車らしからぬ、時流に合わせたスポーツモデル。
SGTのモデルタイプはS型ジュニアシリーズの"グランツーリスモ":GTからとされる。


エンジン形態は従来と一線を隔し、OHVながらプッシュロッドはシリンダ内包として、
メグロエンジンのアイデンティティーとされたロッドケースを廃し、
OHCエンジンシリーズに倣い(単体エンジンユニット、左シフトペダル、セルダイナモ搭載)、
更に外観意匠が洗練されて、当時のヨーロピアンモデルに引けを取らない造形と為った。





 カワサキ250・メグロSG

メグロブランドのオートバイとしては最も見掛ける機会の在るメグロSG。
外観だけでの判別はS−8とソックリである為、
エンジン形態など細部で視なければ見分けが付きにくい。
純粋にメグロとして最後のモデル・SGTのリメイクモデルとして、
エンジンを人気のモデル・S−8に移植したようなモデルなので無理もない。
S−8に似てはいるが、すべてに関して専用設計なので、部品の互換性はほぼ無い。
展示の個体はSGTベースの初期型をカワサキで改良再設計した後期型。
フェルタンクのバッヂが 川崎フラッグと為って判別し易い。




以上、「福山・旧車ミュージアム F6」・展示メグロ車のご紹介でした。
250ccモデルに限られますが、此れだけの車種を一度に拝見できる施設は無いでしょう。
また此方の施設を運営される会社では、レストアを専門に行う部門が在り、
展示車両のレストアを順次されるとともに、レストア依頼の受注もされる由。
更にレストアスペースと工具レンタルもされており、当に旧車再生のお助け処!
写真でお気付きかと思いますが、展示メグロ車も殆どが再生途上の状態にて、
部分の欠品が目立つかと思います。
特にハンドルレバーの無いことに注目されますが、伺うと共通部品のホルダーを
複製作成企画中との由!
本来の素材(亜鉛合金製で劣化し易く脆い)に替えて丈夫な鉄系素材の適用検討中とのこと。
試作品も拝見しましたが、なかなかに良い出来♪
展示メグロ車に適用予定の他、機会ができれば希望者頒布も念頭にあるようなので、
これは期待しても良いかな!?




それでは、次回をお楽しみに!



◎「わたしが観てきたメグロ」のバックナンバーは、こちらからお楽しみ下さい!