わたしが観てきたメグロ 

(第六十三回) 「(第22回)古き二輪を愛でる會」・参加メグロ車より、 


ようこそ!「わたしが観てきたメグロ」では、S−8レストア用に各地で資料用に撮影した写真、
参加イベントで巡り会ったメグロの写真を紹介します。


◎ 今回は、2017年10月8日に行われた「(第22回)古き二輪を愛でる會」
  より紹介します。

◎ 毎年恒例の「京都・古き二輪を愛でる會」ですが、今回も会場はこちら、
   スチールの森 京都(府民の森ひよし)にて開催がされました。

◎ 絶好のロケーションに好天気にも恵まれ、名車・珍車が多数参加
  (500台以上〜主催発表)される中、盛況の内に行われました。

◎ その中からピックアップは、拙同輩のお初S−8に、
  メグロ車最上級の"あの"モデルが登場! 宜しくどうぞ〜


 (第六十三回)
  「(第22回)古き二輪を愛でる會」・参加メグロ車より、


 メグロ250・ジュニアS−8
  (1964年)

今年もやって来ました「古き二輪を愛でる會」!!
関西で開催される数少ないクラシックバイクミーティングの一大イベントですが、
このところ増大する参加車に比してメグロ車比率は減少傾向・・・
ご多分に漏れずオーナー方も高齢化が進み、本来であれば世代交代にて若輩オーナーに引き継がれて・・・
が、しか〜し。
オートバイ需要自体の減少が止まらない中でメグロ車は不人気な様子。
引継ぎ先が定まらないメグロ車がネットオークションを彷徨い挙句に部品化して更には・・・

ま、思うところはこの辺りとして〜
多数お越しの参加バイクが落着きだしたお昼前に、漸く発見した此方、お初なS−8です♪
オーナー方は数年前、この会場にハーレーにて参加された折に"S−8を入手整備中"由、
お話をいただいてた方。
昨年の折に乗って来場されるも時間が遅くなったそうで、当方とはすれ違いだったとのこと。
今回は満を持して漸く拝見することができました〜

オーナー方のお話から、元は神奈川の某有名コレクターショップの所有で在ったようすで、
何となく見覚えの在る外観が視てとれます。
ネットオークションに破格値(とは云え拙S−8入手時より高)で出品されて在ったのを落札入手されたのだとか。
入手後、長期不動で在ったようすで直ぐには動かず再生されたのだそう。
レストアサポートとして徳島の ヨシカワオートクリニック、 大阪の ドリームメイクに依頼された由。


 K5型:単気筒OHV4サイクルエンジン

さて見どころはやはりエンジン廻りですが、お気付きでしょうか!?
タイミングカバーの留めビスの数が少ない、 S7〜S−8初期の仕様に在るタイプ!
其れだけで視れば、稀少な初期型として語られてしまうのですが・・・
実は車台番号と後述の形態から診て、この個体は最末期(64-6900番台)で在ると判明!?
つまりは、このエンジンとの組合せは本来無かったと考えて居たのですが〜謎!!

時系列で判断しますと、
初期型はS7末期型と並行生産後、300ccモデル・ J−8に併せて改良型(後期型)として生産、
カワサキメグロ製作所の最終までの仕様と為ります。
この後に五輪警備用の 500cc・KP250cc・SGT (SG)の生産以外が終了しては在るのですが、
ディラーからのリクエストで一部モデルが川崎航空機明石工場に移して受注生産が為されて居た様子。
その時期のS−8が最末期仕様と診て居るのですが、この個体は此れに該当するのか〜

とすれば、何ゆえ初期仕様のタイミングカバーなのか・・・



推理するに、最末期仕様では改良部品以外の再生産は行われず、在庫補修部品から用立てた様子。
そのために不足した部品の流用適用も(ウインカーにSG用を適用など)在った由。
仮定として、部分で仕様の異なるエンジンでもK5型として同種と視れば、追加工を施し使ってしまったのでしょうか。
単純に、何時しかエンジンを載せ換えられた・・・とも云えるでしょうが、
プライマリサイドから視る限りでも後期型の違わぬ仕様です。
合成で組み上げると何処か違和感や不釣合いな箇所が視られるものですが、
この個体で視る限り、違和感無くあたかも仕様で誂えた具合で載せられて在ります。

何れにしても、珍しい仕様個体として興味津々な一台です♪

 キャブレター&ホーン

キャブレターは純正ミクニのVM22−14を装備。
インテークに付く円盤型エアシャッター(チョーク作用のパーツ)も付属。
サイドカバー内に在るエアフィルターにはゴムジョイントでつながります。
ガソリン滲みの少ない好コンディション〜
オーナー方曰く、レスポンスも絶好調との由。
既に半世紀以上を経過した個体にして奇跡的か〜

ホーンは本来とは異なる、500ccモデル用の大型ニッコーホーン。
レストアサポートされたヨシカワオートクリニックに拠る再生品、由。

 フロント廻り

均整のとれた18inサイズのホイール。
緩衝はテレスコピック型でシンプルな形態。
制動装置も全幅ハブのドラム式で内径165mm
効きが甘いと云われるが通常走行には十二分な性能。
フェンダーは S5 以降のモデルに共通する、段無し深絞りでタイヤを広く覆うタイプ。
ステーが S3 までの前後2本から後方1本と為るのも同じ。
また 500cc:Kも 形態としてはタイヤ幅違い程度で他は同様。
フェンダー上のネームプレート(風切り板)はS−8に本来無いもの。

エンジンガード(バンパー)はヨシカワさんで誂え付けられた由。
フォグランプもオーナー方拘りの注文装備。



 ライトケース廻り

シンプルな砲弾型ケースに鍔付きライトリム。
500cc:Kと共通するが装備の速度計は最高速度が異なる。
 S−8:140km/h → K:180km/h
後は上面にメインキースイッチが並ぶのみ。
走行中のライト点灯操作が少々難儀〜

ケースステーのサイドにはタマゴ型のCAタイプウインカーレンズ。
125cc:CA 用を流用したのは見てのとおり。
同じく500cc:Kも!

 ハンドルレバー廻り

ほぼ原型を維持するハンドルレバーと其の周辺。
左、レバーポストにはライトH/Lにウインカー切替とホーンの各スイッチをまとめたケース。
右、アクセルスロットを擁するレバーポストにS−8ならではのセルスタータースイッチボタンが付く。
その隣に付く後付け風なスイッチBOXは先のフォグランプ用でしょうか!?



 鞍型シート

人気の在ったS3の仕様を受け継いだメインシート。
適度に腰を支持する大きさと、片持ちレバー式アームにゴムブロックダンパーを用いた緩衝機構に拠り、
長時間の乗車姿勢でも無理が掛からない。(感想に個人差在り〜笑)



 シート下部

で、この個体の特筆すべき箇所がこちら!
S−8最末期仕様にしか視られない、シート下カバーの痕跡!!
お判りに為るでしょうか〜
左右のメインフレームをつなぐフェンダー側フレームの交点辺り、
2本のカバーネジ留め用スタッドが立ち上がって在るのが!
本来ならば実際の付いた状況をご覧いただけると良いのですが、稀な形態ゆえ・・・
で、チョイト判り辛いですが、参考に手持ち資料から見つけました!
ご覧下さい〜


シート下部がカバーされて在るのが判るかと存じます。
下部中程にレギュレータケースが在るので、其れを避けるよう穴が開けられて在るのも判ります。


 リア廻り&タンデムシート

リア廻りは積極的にレストアが為された様子。
ウインカーにタンデムステップ、テールレンズなどは
複製新品が奢られて在ります。
マフラーも純正モナカ仕様ではなく、
多分ヨシカワオート謹製の筒型複製仕様な様子です。
エンジンガード(バンパー)もヨシカワさんで整備に際して注文装備された由。

荷台と其れに装備されたタンデムシート。
何れもヨシカワさんで整備際に再生、複製装備との由。
荷台は兎も角として、
タンデムシートは好みの分かれるところか!?






オーナー方曰く、整備後は絶好調を維持されてられる由。
実際にエンジン始動もセルにて一発♪ 貴重なセル完調な個体でございます〜
アイドリングも極めてスローまでセッティングできるポテンシャルを確認!
当時モノのキャブレターでここまで調整可能なのも稀少でしょう。
複製マフラーと相まってエキゾーストノイズも静か。
普通に乗って愉しめそうなS−8でした〜



 メグロ650・T1セニア
  (1955年)

今回は参加台数に比して圧倒的にメグロ車不在な"愛でる会"と為り、
上記と拙者のS−8に、 昨年ご紹介のYレックスが視られた他は、SGすら皆無な様子〜寂!
S−8氏を見送った後に当方も帰路仕度を、と思いきや・・・
会場外側の駐車場に停まる軽トラック荷台上に、見覚え在る容姿のオートバイが〜〜〜

今回のサヨナラ満塁逆転ホームラン級のメグロ車登場〜♪
過去数台しか実車拝見できなかったメグロ車ラインナップの最上級モデル・T1セニアをご紹介!
今まで拝見できたT1は 「湯布院・岩下コレクション」に収蔵展示の一台、
そして 1998年3月8日開催のオールドバイクミーティングin宮崎にて参加されて在った個体のみ。
状態としては岩下コレクション個体がまあまあな保存状態ながら部分に違和感(部品流用か仕様違いかは不詳)
な箇所が在り、宮崎イベントで拝見した個体は、ほぼほぼ原型ながら外観コンディションがイマイチで、
何れも"何だかな〜"

比べて今回拝見のT1は当時のカタログ写真と見比べて非常に近似な外観を維持されてられる様子♪


オーナー方に伺いますと、極初期の個体との由。
拝見しますと近隣からのお越し様子。
外観コンディションから視ますに再生整備は為されて在るようですが〜
フレーム・外装品は基本色の黒に再塗装。
メッキ箇所は再生処理されて、エンジンカバーのアルミ地肌も磨きでピッカピカ♪
オーナー方のご配慮でエンジンも始動していただけましたが、
キック数回であっさり起動〜
エキゾーストノイズはやや高音域な音色ながら至って静か。
これはマフラーの影響が在るかと思いますが、後継モデルのカワサキW1系のような図太い低音域とは好対照。
反ってメカノイズが主張するようで、650ccツインとは思えない繊細な印象〜

 H型:並列二気筒OHV・4サイクルエンジン

極初期モデルとオーナー方が云われるように、機関番号は10番台!
其のエンジンは外見でお判りのとおり、英トライアンフ社のモデルを意識したように似て居ります。
特にクランクケースからタイミング機構、プッシュロッドに掛けての所作は習作かと思われます。
しかし其れは意匠のみでのことで、シリンダ構成は独自な仕様。
シリンダブロックは単気筒独立に拠る並列二気筒という、H系機関の特徴的構造。
未だ鋳造技術が発展途上で在る中で歩留り率を改善向上させることを目的に、
其々単気筒1ブロックとして2ブロックで単気筒並列というユニークな構造に。
同様の構成は後年のカワサキ"マッハ"シリーズなど、2スト多気筒エンジンでも視られる。
利点はヘッドブロック及びクランク室ブロックは二気筒連結構造としているので、
エンジンの整備は連結されたヘッド部を外せば単気筒別にメンテナンスできる。
またシリンダブロックが各気筒で独立しているので並列の間が通風されるために、
空冷でありながらより効果的に冷却できるので2スト多気筒でも用いられて居る。

性能は当時の国産車トップレベルに在り、
国産最重量モデルにして最大出力を誇った陸王1200ccに並ぶもので、
同、陸王750ccの最高速度を大きく上回るほど!
正にメグロの最上級車に相応しい性能を誇る。

 総排気量:ボアxストローク、72x80の651cc
 最大出力:29.5HP/5200rpm
 最高速度:130km/h

キャブレターはミクニアマルの別体フロート式。
プライマリチェーンケースはアルミキャスト、乾式クラッチを内包。
トランスミッションは 500cc:Z5より採用の前進4段ロータリー式

マグネトーに組まれた、
点火タイミングを計るディストリビューター。

単気筒で在れば単純なポイント機構で済みますが、
自動車など多気筒エンジンではディストリビューターを
用いるのが一般的で在った時代。
当初メグロでは戦後初と為る二気筒エンジンに
自動車仕様で臨んだ様子。
その後簡素化とコスト低減が図られて早々に
二気筒用ポイント機構に替えた仕様に為った由。
進角機構は未だ自動化されて居らず、
ハンドルに設けた進角レバーから索道を介して
ディストリビューターごと軸上角度を操作する。
写真右の樽バネが索道ツナギ箇所。




 フロント廻り

同期の 500cc:Z6とほぼ共通な仕様形態。
強化されて在る様子なフロントフォークは、
テレスコピック緩衝に全幅ハブのドラム式ブレーキ仕様。
タイヤサイズは共に19inながら、
T1ではひと回り太い3.50を採用。
二段絞りの幅拡なフェンダーは、
未舗装が主で在った当時の道路事情をまんま反映。
撥ね石からガードするよう深い頑丈な造り。
そのフェンダー上にはアクセントに
お約束なネームプレート(風切り板)が標準装備。


 ライトケース

Z5以降、Z6や 350cc:Yで装備されて居た、
サイドマーカーの付いた豪華なナセルタイプのライトケース。
何れも同じように視えますが、各モデルでびみょ〜に異なるのがミソ!?
主に速度計、アンメーター、メインキースイッチ、シフトポジション灯が配置されますが、
その仕様形態に差違が視られて年式でも異なる様子・・・


各機器の仕様はZ6に同じか近似で在る様子ながら、配置や向き方が異なります。
また他モデルがライトケースの面上に在るのに対し、T1では配置面をケース上面からやや角度を付けて、
立ち上げることで乗車姿勢から見易いように配慮がされて在ります。
流石、メグロを代表する最上級モデル!!


 リア廻り

リアの構造もT1ならでは!
従来モデルの積貨運搬を目的とした基本仕様から離れ、ツーリングに適したスポーツ仕様。
シート構成はサドルにリア荷台の組合せからメグロ初採用のタンデムシートに一新!
懸架方式にメグロ初と為るスイングアーム式を採用して緩衝にはプランジャーに替えてショックアブソーバを装備。
その分、車重の増加が見込まれるところを、従来のロウ付けラグ接合に拠るフレーム組みから、
当時の日本自動車業界では先端技術でも在った電気溶接組立の採用に拠って軽減かつ高柔性を確保。
重量級ながらフレームワークは軽快に!
タイヤサイズはフロントに同じ19in、3.50を採用。
制動は全幅ハブのドラム式、左サイドにカムリンクロッドが付くのは 500cc:Z7に同じ。

右サイドにオイルタンク・容量3Lにツールケース、左サイドにエアクリナーケースを配置。
当時のメグロ車各モデルに共通な仕様。
左右にエキゾーストラインが在るのもメグロ初。
原型ではZ7などと同じ筒型タイプのマフラーで在った様子。
此方ではキャブトンタイプに替えてお色直しされて在ります。
ウインカーも当初は未装備なので、当然ながら後付け品。
フロントには付けてられないので、ライトケースのサイドマーカーで代用か?

 ショックアブソーバ(ダンパー)

スイングアームの緩衝装置と云えばダンパーですが、
現在は専業のメーカー製汎用が基本。
しか〜し、T1のダンパーはメグロ特注品!
国産オートバイでは採用例が少ない時代に、
試作的な意味合いでも在ったのでしょう。
見慣れたメーカー品に見比べて太径で、
荒削りな意匠容姿。
取付部のアームやガゼットも独特な造りで、
大型車用として試行が為された様子が伺えます。

過去に拝見した個体は何れもZ7辺りのダンパーに
替えられて在ったりで、原型で視るのはお初でした〜♪



 フェルタンク

再生メッキが美しいフェルタンク。
此方個体の意匠は後継モデル・ 650cc:T2で用いられたもの。
当初の意匠はZ6同様のタンクバッヂ廻りを楕円塗りで飾るもの。
直ぐにフェルタンクの意匠も各排気量クラスで違えるようにされて、
650ccクラスはタンクバッヂ廻りを砲弾型に塗分けたデザイン。
色は車体色の黒ではなくシックに濃茶色にベージュ線の縁取りに。
シックな雰囲気は英・ARIELのオートバイを思わせます!
容量は15L、フェルコックもスクリュータイプの原形様子。


 タンクバッヂ

メグロウイングのタンクバッヂ。
Z7やS3などのスタンダードタイプより大きい大型モデル専用のタイプ。
ブラスにニッケルを下メッキした上で金メッキが為されたベースに七宝を施した仕様は、当に工芸品〜
流石にメッキが擦れてニッケルとブラスの地肌が現れてしまってますが、確りと残る七宝彩色が艶やか♪

今回も良いものを拝見させていただきました〜


それでは、次回をお楽しみに!



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