〜メグロの小部屋〜:メグロ用語・ロータリー式トランスミッション 今でこそホンダカブやビジネスバイクなど実用車では一般的なロータリー式トランスミッションであるが、その基本的機構を考案し実用化 したのはメグロであった。 エンドレス式、もしくはメグロ式エンドレス前進4段変速機と称され、昭和28年2月に発表された、新型500cc・Z5に於いて搭載された 新式機構のトランスミッションとして初めて登場している。程なく好評を持って歓迎されたロータリー式トランスミッションは直後に開発 登場する350cc・Y型レックスにも採用され、逐次にメグロの各クラス車にも適用し、更にアセンブリーメーカーにも供給が始まると次第 にロータリー式トランスミッションを採用するメーカーが拡がっていった。 当時のZ5に於けるPRによると、「特許出願・特殊装置により、変速がさらに容易、迅速、確実化されました。」と、ある。 その開発経緯について、当時の専門雑誌記事より関係者の声を再現すると、 (その一:月刊モーターファン誌1954/2より)  (質問者)   〜エンドレスのギヤチェンジについて〜  (棚橋東一・月刊モーターファン誌テストライダー)   ロータリー式といいますかエンドレスというのですか、このギヤチェンジ方式はほめてもほめすぎることはないというくらいです。   私は自分の車に乗るのがいやになったくらいで、上げたり下げたりなので靴が傷みます。家内にどうして右足ばかり痛むのですか(笑)   右足を踏まれるので(笑)というようなことで誠に具合が悪い。こんなことのないだけでも、このギヤチェンジはよいものですね。   今日初めてなのですがギヤの入り方に不馴れのため、乗り始めは調子が悪かったのですが、金子さんにいろいろ秘訣を伝授されてから、   非常によくわかるようになりましたが・・・  (金子福一・目黒製作所検車課長)   自然に踏むようにして、半クラッチを使うかというような程度にして踏んでいただければ完全に入るかと思います。  (鈴木武雄・目黒製作所常務取締役製造部長)   突き当たるまで踏むことが大事ですね。  (棚橋)   私の経験では、英車に乗っていると、グッとふみすぎてもうひとつ先に行くような気がしましたので・・・  (質問者)   〜あれの着想というのは?〜  (鈴木)   各段階毎に従来通りギヤを入れるとすると前進4段ではギヤの入れ換えが大変です。トップの次はニュートラル次はローです。これを   次々と繰り返すにはどうすればよいかと考えたのです。そうしたら案外簡単にいきましたね。昔からミッションを作っているので、苦労   はないはずなのですが、相変わらず苦労のしずめですね(笑)  (棚橋)   これは世界に誇るべきものでしょうね。  (質問者)   〜どんな仕掛けなんですか?〜  (鈴木)   従来の扇形のギヤを丸いものにし、配置をそれに割ふったもので、ヘリカルスプラインで突き当たってまた元に戻るようになっている。  (質問者)   〜ちょっと例がないのではありませんか?〜  (鈴木)   真似をしたのではなく、考えたのですからね。 (その二:月刊オートバイ誌1955/6より)  (質問者)   〜変速の手動が足動に変わったのは、やはり時代の要求ですか?〜  (浜田栄司・目黒製作所製造部次長)   ここ2〜3年の間にほとんど足動になりましたね。  (鈴木武雄・目黒製作所常務取締役製造部長)   手動から足動に切換えた当時はパーツでおいていてくれ、手で動かす方がいいからと言う人もいたね。もっともこのパーツは余り売れな   かったがね(笑)  (中略)  (広瀬藤五郎・目黒製作所検査課長)   ロータリー式ミッションを使ったのはうちが一番最初ですね。  (浜田)   愛乗者カードによると、ロータリーは評判がいいですね。  (鈴木)   ロータリーは世界でも最初だ。