〜メグロの小部屋〜:650cc・T2 セニア T1型の改良モデルになるT2セニアはメグロの最大排気量かつ最上級モデルとして1957年4月に登場。T1型との相違はコストダウン を目的に改良された部分であった。 "セニア"の特徴でもある二気筒OHV651cc機関に対しては、外観上吸気ポートの形状変更程度に観えるがシリンダーやベースなどの 鋳鋼部品の製法が従来の特殊鋳造からメグロが初めて採用した特殊鋳造プロセスによる鋳物鋼"センダイトメタル"に改良されて使われた。 これによりT1の性能に比べ最大出力は29.5HP/5200rpmから31.0HP/5400rpmへと飛躍的に向上している。 フレームは大幅に改良されている。この頃人気を博していた500cc・Z7 スタミナとの共通化を図りT1型のダブルダウンチューブを シングルダウンチューブとした。このため外観的にシンプルでスッキリした形態になり、見た目の重量感はかなり緩和されている。 コストダウンも図られ、T1で使用されていた高級素材のクロームモリブデン鋼管をZ7で使われていた一般的素材の引抜鋼管へと替えて 採用。その他寸法の共通化や変更できないサイズには共通部材からの軽加工でどちらにも使えるように工夫するなどされている。 ヘッド部もT1のサイドランプの付いたナセルと云われる高級感のある意匠からシンプルな砲弾型ライトケースにされてZ7などとの共通 化がなされている。シートも高級感があった段付きダブルシートからサドル形状のシングルシートに変更されて実用車としての位置付けを 強くしている。そのためか外観はZ7P白バイ仕様車に大変良く似た形態となった。これはT2の需要が何であったかを如実に物語っている。 なおシートはメンテナンスを容易とすることから下にあるエアクリーナーが直ぐに取り外せるよう蝶ネジ2本で固定される。エアクリーナー は耐久性と性能に優れる塩ビを採用。 先の通り、T2の需要は官需それも白バイとしての色を濃くして登場させている。T1はメグロの最上級モデルとして看板のようなバイクで はあったが全てに最上の仕様と材料を使っていたことからとても普通には買うことができない車であったことから販売実績につながらない カタログ誌上だけのモデルになっていた。当時の実勢物価から比べてT1は今の500〜600万円にも相当する車であり、使用目的が明ら かであるか金持ちの道楽として高級海外製バイクと同列で観られるかでなければ希望する顧客はいなかった。そこでメグロとしては最大排気 量クラスを維持するには一定の需要が見込める安定的顧客層を欲して、Z6〜7の採用により良好な取引先にあった警察庁、すなわち白バイ 向けとしてT1を改良し売り込む計画を立てたと観るべきだろう。 事実、初ロット分より4台が警察庁へサンプルとして出荷されている。その評価によってか、または前年より白バイ購買先がメグロだけとなり 独占的交渉の結果なのか、翌年からはZ7Pに並びT2Pが大幅に採用されている。 ちなみに'57年は169台中4台、'58年は124台中50台、'59年には95台中70台がT2Pであった。 しかし警察庁の要求として、年々登場する高性能でスピードの出る小型バイクに対し、その取り締まりにはスピードだけではなく取り回しの 容易な車を条件に出してくるのである。結果としてメグロの答えはZ7Pの機動性とT2Pの高速走行性を考慮して、更には海外メーカー、 特にはBSA・トライアンフと云った英国メーカーの高性能車を参考に白バイ専用仕様とも云えるバイクKH(K スタミナ)を開発するので ある。 T2はK スタミナの完成と白バイへの採用を見届けて'60年初に製造中止、先の実績とおり388台中約1/3が白バイとなり一般には 高嶺の花であったT2はT1と共にメグロ最上級モデルとしての役割を終えた。 T1に同じくT2も一般には殆ど売れていなく生産台数も少ないことから現車の存在はかなり貴重と云える。私自身も実車は観ていないので 現存を確証できないが、他の白バイメグロ同様に耐用後の払い下げによりかなりの台数は一般に出ているはずなので、T1程度には現存して いるのではないかと思われる。 ・・・主要諸元・・・ ・全長:2280mm ・全幅:820mm ・全高:1110mm ・軸間距離:1450mm ・車輌重量:228kg ・機関型式:H2型:二気筒OHV4サイクル ・総排気量:651cc ・最大出力:31.0HP/5400rpm ・最高速度:130km/h ・燃費:33km/リットル ・変速機:前進4段ロータリー ・タイヤ:(前)3.50×19−4 /(後)3.50×19−4 ・始動方式:キック