〜メグロの小部屋〜:ワークスレーサー・メグロRZ 浅間火山レース参戦を目的にそれまでのオートレースでの経験と海外メーカーによる最新バイクを参考に開発したワークスレーサーマシン。 500ccクラスは「レーシングZ」〜Zシリーズのレーサーマシン〜としてRZと型式がつけられた。 機関はメグロ伝統の500ccクラスをベースとし単気筒498ccエンジンではあるが、OHVではなくSOHCによるカムチェーン式と ベベルギヤシャフト式の二種を開発、'55年、第一回浅間火山レースに投入する。 カムチェーン式のエンジン(RZA)はシリンダ横にカムチェーンを配置し回転をカムシャフトに伝える構成とした。ベベルギヤシャフト式 のエンジン(RZB)はシリンダ横に回転シャフトを立ち上げカム駆動回転を伝え、ヘッドにM・Wマークを付けたヘッド部にベベルギヤ (傘歯歯車)を配置し回転をカムシャフトに伝える構成とした。榎本功氏により発見・レストアされたRZのエンジンはこれであるらしい。 しかしこの機関はシリンダヘッドにカーバーの無いオープンカムとした為、熱がこもらず放熱には良いが、走行時の飛び石での破損やオイル 潤滑の面での弱点があり、火山礫を整地した公道をコースとした第一回浅間火山レースでは過酷な状況に苦戦し、好成績は得られなかった。 そこで'57年、第二回浅間火山レースに向けて改良エンジンを開発する。ベースは前回同様単気筒498cc機関ではあるが、前回の反省を 基にシリンダヘッドへのカバー設置と2バルブ化がされていた。 DOHCとなった新エンジンはシリンダ横にカムチェーンを配置し回転を排気側カムシャフトに伝え、更にそこからシリンダヘッド内で吸気 側カムシャフトにチェーンを配置し回転を伝える構成とした。 この機関では外的要因による支障は避けられるようになったが、シリンダヘッドが大きくなり、しかもオイルが充満した状態となるため重心 が高く重たかったという。しかしDOHC化によって高性能になったエンジンにより第二回浅間火山レース350ccジュニア/500cc セニア級に於いて四台のRZを参戦させ、そして見事一位・二位を征した。 一位はエントリー"57"杉田和臣選手で、この時の車体が榎本功氏により発見・レストアされたものであるらしい。二位はエントリー"54" 折懸六三選手で、氏はThe 20th "TIME TUNNEL"ではエキシビジョン ランにおいて、榎本功氏のメグロRZを復活走行してみせてくれた。 なお350ccジュニア級で同時出走したエントリー"8"杉田清蔵選手のメグロRYにはSOHCによるベベルギヤシャフト式の旧機関を 改造して搭載、一位から五位までホンダワークス勢に征されたものの六位に入賞している。 フレームはレーサーマシン用に用意されたパイプフレーム。フロントはテレスコピック型リアはスイングアーム機構で市販車Z7 スタミナ に準じている。特徴ある燃料タンクは製作後に干渉部をハンマーでたたいて整形したもの。ハンドルとの干渉部の凹みには搭乗選手の分かる よう色違いに塗られていた。 テールカウルは浅間火山レースでは車体後方の空気整流による抵抗軽減が効果ありとしての考慮をした形状。実際にはコースの火山礫対策 (跳ね石の巻き上げ防止)に効果を発揮した。 浅間火山レースでは、国産小型自動車産業育成を主眼に開催された経緯から、ビスの一本にまで厳しい国産部品使用の徹底がなされていた。 このためBMWのコピーマシンで知られる大東製機は、入賞後の車体検査でたったひとつのBMW純正ビスが見つかったことで失格になった ほどであった。メグロも市販車ではキャブレターなどで海外部品を使用していたため流用せずにメグロロゴの付いた内製品を使用している。 (実際の製作元は三国商工であるらしい) 榎本功氏によりメグロRZが奇跡的に発見されたが、残念ながらエンジンはSOHCによるベベルギヤシャフト式のみであり、メグロの技術 を極めていたDOHCによるカムチェーン式のものは未だ発見されていない。 ・・・主要諸元・・・ ・全長:2260mm ・全幅:710mm ・全高:1110mm ・軸間距離:1450mm ・車輌重量:168kg(RZB) ・機関型式:RZ型:単気筒OHC4サイクル ・総排気量:498cc ・最大出力:32HP/6500rpm(RZB) ・最高速度:140km/h(RZB) ・燃費:不明 ・変速機:前進4段 ・タイヤ:(前)2.75×19−4 /(後)3.25×19−4 ・始動方式:キック