〜メグロの小部屋〜:250cc・ATオートラック メグロ250cc・S7ジュニアの兄弟車として1962年より210台が製造・販売される。 ATの大きな特徴は、S−8共通のフロントに10in/5.2という小径極太タイヤ、低めで広い荷台という外観にある。「五十貫トラック」 の異名を持ち、今の搬送用三輪バイクのルーツのようなモデルである。 他に外観の特徴としては、250ccの新モデルS−8と同じ外装とし、リア部を除いては全く共通デザインとなっていた。 機関はK5型248cc単気筒OHV4サイクル、電装12v・バッテリー点火・セル付きで、S7後期とS−8の仕様そのままである。 ただ変速比は荷物搬送という条件から、やや低速でトルクが太くなる設定、最高速度も抑えめの90km/hである。 緩衝装置も当然、耐荷重性に優れるプランジャー(リア)を使用。 当時としては斬新なアイデアではあるが、目論見ほどの市場がなく、ほとんど販売実績を得ること無しに終わった(販売はメグロ終焉時 までされた)。 これは私感だが、S−8の誕生に少なからずATが関係しているのではと考えている。通説では、メグロ愛好家の要望であったS3の再販に 答えて、S7の仕様にS3の外観を加味したモデルチェンジを実施したとされる。この説も理由のひとつとは考えるが、当時どれほどの市 場性が有ったか疑わしい。むしろ思うに、ATの製造を控えめに考え、その為に用意した部品の活用手段としてS−8を企画したと云えない だろうか。その根拠として、ATとS−8の発売時期がほぼ同じ(ATが早い)。そしてSGTの開発がこの時すでに始まっていたこと。 つまり、販売実績からしてS−8でなくともS7で十分だったと言うことである。 では、なぜにATがS3の再来を思わすデザインで登場したのか疑問となるが、わたしは構造上の条件とデザイン的にまとめる為の手法では ないかと考える。ATとS3の共通点として、リアのプランジャーがある。当時より、この機構は耐荷重性に優れ信頼性も高かったことから、 まず仕様条件とする。これに小径極太タイヤ、低めで広い荷台という外観がもしS7のデザインと融合したとなれば、やや異質なモデルが できないだろうか。S7ではないデザインであれば、プランジャー構造の共通構成と、ややリア部が下がってはいるが全体としてはS3の イメージが強い。とすれば、ATがS3に近いデザインとなったことに違和感は無かったのでは、と想像するのだが。 ・・・主要諸元・・・ ・全長:2075mm ・全幅:880mm ・全高:1045mm ・軸間距離:1425mm ・車輌重量:175kg ・機関型式:K5型:単気筒OHV4サイクル ・総排気量:248cc ・最大出力:12.5HP/5400rpm ・最高速度:90km/h ・燃費:− ・変速機:前進4段ロータリー ・タイヤ:(前)3.00×18−4 /(後)5.20×10−4 ・始動方式:セル・キック