〜メグロの履歴室〜:メグロ躍進期(1)  昭和26年は、「目黒製作所」がオートバイメーカーとして初めて実績を得ることが出来た年であった。250ccの小型 オートバイJ型「ジュニア」は、社長・村田延治の予想を遙かに上回る発売台数を上げていったのである。  1月にはJ型で初採用したオレオマチックテレスコピック式のフロントフォークを500ccのZ型にも適用、改良した 「Z2型」が完成し、またJ型「ジュニア」も更なる機関改良を進め、メグロが得意とするZ型同様のロングストローク仕様と したG型・250cc単気筒OHV4サイクル機関を開発する。  機関構成が500ccモデルと同じになりプッシュロッドが外部に移りケースがエンジンサイドに出た外観に、デザイン されて特徴あるY形の形態となったタイミングケース。そして「ジュニア」シリーズの最後まで変わることの無かったボア× ストロークの仕様(65×75)。これがその後のメグロエンジンの外観的シンボルと成ると共に、このエンジンこそメグロの ベストセラーシリーズと成って行く「ジュニア」の基本機関であり、改良が重ねられて後、メグロ「ジュニア」最後の型式である S−8型まで続くのであった。この新型250cc機関は、12月にJ型「ジュニア」に替えて発売を開始した「J2型」の機関 として搭載され、「目黒製作所」の年間オートバイ生産台数は、メグロ始まって以来の1000台以上を記録した。       ・昭和26年々間生産台数記録          500cc:Z2型・・・・・・・・・・509台          250cc:J・J2型・・・・・・・・801台          −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−                    生産台数合計・・・・・・・・・・・・1310台  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   この活況に対し、村田社長は再度の事業見直しとも見て取れる社内改革を謀る。6月25日の第26回定期株主総会に 於いて、会社規模の拡大と役員の独立退職に伴い、役員の改選と増員を決議、前年に関係会社であった昌和製作所から戻って きていた鈴木武雄が新たに取締役としてメグロの経営に加わる。  そして生産面での機構改革として自社および系列・協力工場の見直しと再編を決めて、オートバイ専業による効率的な増産 体制を構築、ここにメグログループとも云える企業体を完成して行くのであった。  ・「目黒製作所」事業所および系列事業所(昭和32年)   *本社工場(車体組立・検査・出荷)     ・敷地:1809坪 ・棟坪:28棟1361坪 ・従業員数:217人     ・設備:受電容量100kw   *烏山工場(トランスミッション他部品製作)     ・敷地:5544坪 ・棟坪:25棟1015坪 ・従業員数:179人     ・設備:旋盤他180台・受電容量100kw・自家発電100kw   *(株)昭和機械製作所(エンジン製作専門)     ・敷地:1097坪 ・棟坪:10棟 699坪 ・従業員数:139人     ・設備:旋盤他164台・受電容量129kw   *(株)目黒合金鋳造所(鋳物部品製作専門・特殊鋳造、アルミ合金部品、銅合金部品)・・・・・昭和26年新規設立     ・敷地: 569坪 ・棟坪: 9棟 563坪 ・従業員数: 65人     ・設備:電気炉(300kw)1台・重油槽(11t)2基・他26基・受電容量330kw   *(株)大和製作所(フレーム部品製作専門)・・・・・昭和26年新規設立      (フレーム部品製作の協力工場であった三浦金属工業(株)が「エーブモーター」に加わる事となり、同社の一部門を       独立分離させて設立)     ・敷地: 363坪 ・棟坪: 6棟 263坪 ・従業員数: 57人     ・設備:電気溶接機17台(設立当初はロウ接)・他8台・受電容量164kw   *目黒塗装工業(株)(塗装工程専門)・・・・・昭和31年新規設立     ・敷地: 321坪 ・棟坪: 4棟 331坪 ・従業員数: 31人     ・設備:静電塗装装置1式・赤外線乾燥機(コンベア式)1式・受電容量235kw   *目黒板金工業(株)(プレス部品製作専門)・・・・・昭和30年新規設立   *メグロ鍛造(株)(鍛造部品製作専門)       −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   営業面では販売網組織「メグロ会」の全国展開を目指し極力、都道府県単位の代理店設置と充実をはかるため、代理店会員の 入れ替えや新設が行われている。 ・「メグロ会」会員の動向(昭和26年)    (解約)                           (新設)    茨城地区・・・・・・・・・・・・茨城くろがね商会(株)          石川・富山地区・・・・・・・(株)岡田部品店    愛媛地区・・・・・・・・・・・・四国小型内燃機(株)           三重地区・・・・・・・・・・・・坂倉モータース    長野地区・・・・・・・・・・・・信陽自動車(株)             香川地区・・・・・・・・・・・・日東商会                                   徳島地区・・・・・・・・・・・・旭自動車(株)                                   高知・愛媛地区・・・・・・・野村工業(株)                                   岐阜地区・・・・・・・・・・・・坪内商会                                   茨城地区・・・・・・・・・・・・(株)千葉くろがね商会                                   長野地区・・・・・・・・・・・・トモエ自動車商事(株)                                                 (つづく) (*この文章は、二輪史研究会資料「メグロ資料集」         二輪史研究会資料「メグロコレクション」         二輪史研究会資料「メグロ製作所社史」         八重洲出版「日本モーターサイクル史1945-1997」より「懐かしの名車STORY“メグロ物語”」         三樹書房「日本のオートバイの歴史」富塚清・著         日本経済評論社「日本の自動車産業」四宮正親・著  より参照、構成しています。) (*登場者の敬称は省略させていただきます。)