〜メグロの小部屋〜:メグロ用語・メグロウィング

メグロウィングとは、燃料タンクのバッヂでおなじみのトレードマーク付き紋章。
登録商標だった「M・W」(メグロ・ワークス)もしくは「M・M」(メグロ・マニュファクチャー)の図案化に、羽根と「MEGURO」のロゴを配したもの。
ちなみに、メグロのタンクバッヂはグレードが高く、250ccのS3、S-8、500ccのZ7、Kなど七宝焼きの美しい仕様のものが使われている。
また年代・車種により配色・大きさ・デザインに変化があり、S7、CAなどはプラスチック仕様の他メーカーに観られたものが使われた。



〜エンブレムコレクション (メグロウィング)〜

(写真は、Z2用)


 多色印刷シート転写タイプ(トランスファー式)

最初のメグロ市販オートバイ・Z97型以来使われた、
多色印刷シートからの転写による仕様。
フェルタンクの意匠が手塗りに拠っていた時代にはマーク図版の転写は手間が省けて、外装に色彩を添えるには十分であった。
適用型式は、Z97,Z98-Z('51),Z2,Z3,Z5(初期型),J

(写真は、J3用)


 七宝焼きタイプ(初期)

お馴染みの七宝焼きに拠るタンクバッヂはJ2型辺りからで在った様子。
意匠的には既に完成された図柄では在るが、やや輪郭が惚けた貧相な感じ。
適用型式は、J2,J3,J3A,S,S2(初期型)

(写真は、Z6用)


 七宝焼きタイプ(大型仕様)

ジュニア系に続き、500ccのZ5型にはグレードの高い七宝焼きのタンクバッヂを用意。
メグロオートバイの上級モデル用としての威信が反映されて在るかのようにブラスのベース板は金メッキがされて在り、 そのサイズも大きめで意匠の輪郭もクッキリとした高品位な仕様。
当時の自動車用として視ても最上位なエンブレムで、七宝焼きの工芸品としても価値あり。
また、同時期の650cc:T1型や350cc:Y型でも使われた様子。
なお一般的な後述のスタンダードタイプとはサイズ違いで互換性はない。
適用型式は、T1,Z5,Z6,Y

(写真は、E1用)


 七宝焼きタイプ(小型仕様)

一方で当時の新ラインナップとして登場した125cc:E1型には同一意匠ながら七宝の色を変えたタンクバッヂを用意。
基本の色合せ(青の濃淡)を緑の濃淡に変えて「M・W」も金色から臙脂として在る。
サイズもやや小振りなので容易に判別ができる。
なお一般的な後述のスタンダードタイプとはサイズ違いで互換性はない。
適用型式は、E1,E2

(写真は、Z7用)

(写真は、S3用)


 七宝焼き・スタンダードタイプ(旧仕様)

一般的にメグロウィングのタンクバッヂと云えばこのタイプ。
250cc:S2型より用いられた様子。
後にコストダウンに拠り、分かれて居たジュニア用と大型用を統一して同じ仕様とした。
とは云え、ブラスのベース板はクロームメッキがされて在り、
自動車用のエンブレムとしては破格の品位は維持。
当時の国産バイクの殆どが、エンブレムの素材を板金色彩か樹脂に代えつつ在ったことから、より高級感を放つことになった。
そのことが、よりメグロオートバイの価値を高めて人気を得た要因とも為り得た。
見た目は後のS−8型用と同じだが、下辺の反りが若干凹形状
であるのが特徴。
適用型式は、Z7,Y2,S2,S3,S5

(写真は、S3用)


 ダンパーノブトップ

500cc:Z7型と250cc:S3型ではハンドルポストに在るダンパーノブの上面にもメグロウィングのエンブレムが付く。
フェルタンクバッヂとは異なり樹脂板に加飾を施した仕様で後述のプラスチック(CA)タイプに近いもの。
ただ樹脂製の難点として耐候性が弱く、当時からの個体には殆ど完品が無い。
レストアの際には需要が在り複製品が流通して在る。
適用型式は、Z7,S3

(写真は、CA用)


 プラスチック(CA)タイプ

1959年以降のメグロ不振期にコストダウンと意匠の時流化を目的に誂えたタンクバッヂを用意。
125cc:CA型用として使われ、後にシリーズモデルの170cc:DA型と250cc:S7型に波及した。
意匠は七宝焼き仕様を踏襲したものの、質感の貧弱さは如何ともし難い。
成型された樹脂ベースの裏に、銀色付けと黒色バックコートがして在る。
適用型式は、S7,CA,DA

(写真は、K用)


 七宝焼きタイプ(K型仕様)

1960年に登場した500cc:K型に用意された七宝焼きタンクバッヂ。
スタンダードタイプに共通化されて在ったものを敢て高品位な専用部品として新調された。
意匠と形態はスタンダードタイプに同じであるがブラスのベース板の金メッキが復活。
またフェルタンクの面形状に合せベースの曲面が緩やかで在る。
なので取付ピッチではスタンダードタイプと同じだが、曲面の違い為に他では密着して付かない。
適用型式はK型のみ。

(写真は、S−8用)


 七宝焼き・スタンダードタイプ(新仕様)

1962年に登場した、250cc:AT型とS-8型に誂えた七宝焼きタンクバッヂ。
ジュニアシリーズ(S7)用にはプラスチックタイプを用いて居たが、S3型への復古をコンセプトに置いたことから、七宝焼きの仕様に回帰した。
基本形状はS3型に用いたスタンダードタイプながら新たに型起しが為された様子で若干ながら違い(下辺の反りが若干凸形状)が視られる。
現在レストア用として在るレプリカ品はこれを雛形としている様子。 実際には適用車種が限られるので使用目的車種との相性(取付曲面、取付穴ピッチ)を確認して置くことが肝要。
スタンダードタイプ(旧仕様)とは互換できる模様。
適用型式は、AT,S-8,J-8

(写真は、MEGURO K3用)


 アルミ型押し・彩色タイプ(MEGURO K3仕様)

マサカのメグロブランド復活に拠り登場した新モデル・MEGURO K3のために誂えたエンブレム。
MEGURO K3のコンセプトに沿ったオールドメグロ的意匠に拠り、懐かしいメグロウィングも復活することに成ったもの。
またMEGURO K3への採用に当たり失効して在った意匠登録もあらためてされて在る。
デザインとしては七宝焼き・スタンダードタイプをベースとしたものであるが、その造りは異なり、 七宝焼き顔料の有害性と生産効率を考慮して、ベースにはアルミ材を用いて意匠を精密型押し、彩色には拘りの人手に拠る塗り作業で再現。
七宝焼きにも劣らぬ工芸品的な仕上がりと成って在る。
フェルタンクにはネジ留めではなく今様に粘着貼りと為って居る
適用型式は、MEGURO K3のみ


〜番外〜

(写真は、F用)


 トレードマーク(M・W)タイプ

1958年に登場したOHC機関搭載モデルシリーズ用として、
250cc:F型と125cc:E3型に用意されたタンクバッヂ。
カラフルな外装に合せて敢てシンプルなトレードマークを付けた
フェルタンクの意匠は纏まりが在り好感がもてる。
しかしながら、メグロブランドのオートバイとしては極端なイメージ
チェンジとなり、従来の意匠からは掛け離れた存在に視える。
結果的にブランドイメージから乖離したことが、OHC機関搭載
モデルの業績不振へとつながって行った。
適用型式は、F,FY,YA,E3